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「そうだ。お前にはどうだかわからんが、ショーのパスをやろう」  テマリは座りなおすと、残ったままのパーカーの前ポケットを探る。それから、白い封筒を取り出すとそれをシカマルに差し出した。 「関係者席の良いとこだ。『呼びたい…

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 シカマルが、あらかたの服をダンボールに詰め込み終え、ソファーに座り込んで一息ついていると、テマリが新品同然のスマートフォンを操作しながら、中が見えないように知らない部屋から出てきた。 「よし、これで終わりだ!世話になっ…

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「シカマル、どうだ?」  テマリに声をかけられて、シカマルが振り返れば雑誌と違わぬテマリがそこにいた。 雑誌のように真っ赤なリップこそは引いていないものの、ワンピースの深い緑色は目の色とよく合っていた。 「悪くねーんじゃ…

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 なんで傷ついてんだ?オレ。  シカマルは、背後でカサカサとテマリが服を着ていく音を聞きながら、服で詰まったダンボールの傍らに置いてあった崩されたダンボールを組み立て直しつつ考えていた。  元々そうだったじゃねーか。  …

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 シカマルが続けてソファーの服をまとめていると、目の前でテマリが着ていたパーカーを恥ずかしげもなく脱ぎ去り、下着姿になったのだが……。 「なっ……!」  シカマルは思わず目を背けた。 テマリと『恋人同士がすべきそういった…

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 アッ。 シカマルの脳裏をよぎったのは、屋上でいのが自分のところへ持ってきた雑誌だった。『彼のハートを射止めるなら……』なんてキャッチコピーも。 ブラウスにタイトスカートがついたようなモスグリーンのワンピースに、濃い目の…

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 片付けを提案したものの、シカマルはあまり整理整頓が好きではない。物を片すほど持つぐらいなら、最初からなるべく物を持たなければいい、そう思うほど片付けという行為を好んではいなかった。 だから、必要最低限生活できるかできな…

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「なんだこりゃ?」  シカマルはいつもの殺風景さを失った部屋を見て、思わず声を上げた。そこほ、部屋中に色とりどりの洋服が、ソファーや机の上にに散らばっており、足の踏み場もない有様だった。 「どうしたんだ?コレ」  シカマ…

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 エレベーターに乗ってそこそこの高さまで登り、廊下を歩いていくとそこはテマリが住んでいる部屋だ。 慣れない雰囲気に気疲れしたせいか、もしくはこれから起こることへの不安か、期待か。 シカマルは一つため息を吐いてから、呼び鈴…

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 日曜日の昼下がり。 シカマルが、テマリと『勉強会』の約束をしている日だ。 若干、憂鬱に思うところはある。しかし、面白おかしく話してくれる歴史や、各地を渡り歩いて培ったという語学力にはシカマルも脱帽せざるをえないところが…