裏返しのTシャツ

「あぁ、もう。シカマルに腹がたつ」 そう。私は布団の中で怒っていた。きっかけは、日常の些細なことの積み重ねがふいに爆発しただけ。「どうして、シャツを裏返しにしたまま洗濯機にいれるんだ」 こうしてほしいと思っていることを口…

冗談

「子どもができた」と食堂の席で、シカマルと向き合っているテマリは言った。我愛羅からの書類はこれだ、と火影邸で冷静に報告している時と変わらなかった。シカマルは「そうか」とだけ言うと、味噌汁をすすった。 シカマルはテマリと会…

【R-15】似合わない

 それは興奮した獣とそっくりだ。吐き出すように激しく胸を揺らして息をする。それは、昼はのんべんだらりと日々を過ごしている男が、夜にしか見せない顔のおまけ。おまけのはずなのだが、この男のそんな姿を見ているときは私もたいてい…

ゴム毬と影

 砂からぽてりと落としたゴム毬の行方を、オレは見なかった。理解をしてくれる人がいなくなったことがこんなにも苦しいだなんて思わなかった。オレにまとわりつくものは全てを奪っていった。 しかし過去を精算して振り返ってみれば、そ…

28

 すうと手を伸ばし、大腿部を撫で付けるとテマリは一層高い声を出す。そしてぎゅうとシカマルの頭を抱きしめて、自らの胸をシカマルの顔を押し付ける。重量のあるそれはシカマルの息が詰まるほどだったが、それでも好奇心の方が勝った。…

相談役は奥様が好き_ネックレス

 時間のある時は、テマリの手伝いをするようにしている。これはテマリが言い出したことではない。オレが自分で判断しているだけだ。 家具を移動させるような大掃除に、特価の日の買い物。いくら腕利きのくノ一とは言えども、醤油瓶の重…

平手一発

「しっかりしな!」そう言われて頬をひっぱたかれた時に、オレは身が引き締まる思いがした。うじうじと悩んでいても仕方がない、お前はどうしたいんだと言葉以上に詰まった平手は何よりも効いた。けれど、息子はそうは思わないらしい。頬…

相談役は奥様が好き_手袋

「テマリ、オレの手袋どこいった?」私が、シンクの中に積み上げた食器を洗っていると、可愛くない髭面の男の顔がひょっこりと顔をのぞかせる。「昨日、靴箱の上に置いてたじゃないか」「えっ、そうだっけか?」慌てて出ていく広い背中。…

燻る

シカマルと別れることになった。恋人同士になって、一年目と言う日に。 里が違う。 たったそれだけのことが原因だった。それに、シカマルが「耐えられない」と言い出した。 「結婚しよう、つってるのに、アンタ、なかなかこっちに来て…

彼タートルネック

「ぎゃあ!」テマリの品のない悲鳴で起こされたシカマルは、枕に沈ませていた頭を持ち上げた。しっとり濡れたシーツは足元で丸まっていて、マットレスに直に肌が当たる。頭が鈍く痛むのは、昨晩、自室に連れ込んだ彼女と「久しぶりに会っ…