お題:また
オレたちの関係を「付き合っている」と言ってしまっても良いのだろうか?背筋を鉄扇に沿わせてしゃんと伸ばして隣を歩く女との関係は、不明瞭なままだ。「シカマル、今日の昼はどこにするんだ?」「この前行ったとこにしようぜ。うめーっ…
オレたちの関係を「付き合っている」と言ってしまっても良いのだろうか?背筋を鉄扇に沿わせてしゃんと伸ばして隣を歩く女との関係は、不明瞭なままだ。「シカマル、今日の昼はどこにするんだ?」「この前行ったとこにしようぜ。うめーっ…
かたい殻を割って、渋皮も剥いてやると、つやつやとした実が晒される。テマリは、甘栗を口に放り込むと、もぐもぐと口を動かしながら空を仰いだ。砂海に浮かぶ夕焼を、散り散りになって隠す雲は、どうしようもないまま、そこ佇んでいる。…
梅雨の雨は、しとしと降る。シカマルは買いたての傘を広げると、人ごみの中をかき分けて家路を探した。日付がもうすぐ変わってしまうというのに、休日のロータリーは人が多い。雨にかこつけて相合傘をしているカップルや、傘を買うお金も…
里を出る前にひっくり返して置いた砂時計は、里に戻れば時を数えるのをやめていた。窓際に置かれたそれは、また砂が落とされるのを静かに待っている。 三分しか時間の測れない砂時計なのだから、当たり前だ。私が里の外に出たころにはも…
私が輿入れをして、初めての初夏。私は、太幹から伸びる枝が作る木陰を踏みながら、シカマルと奈良の森の中を歩いていた。こっちに来てから、おおよその行事は頭の中に入れていたけれど、実物を見たことがないからとシカマルが、休みの…
どこから来たのか、大量の人が行き交う通りは活気で溢れていた。人が通り過ぎるたびに、肩で額を小突かれて、肘をぶつけられる。足を進めるたびに体が痛む通りに、オレはいた。 見たこともがない装束で身を包んだ人たちは、国境沿いか…