３１

「その代わり、ナルトとの約束は果たさせてもらうぜ」
「案内をするーーーと言っていたやつか？」
「あぁ。じゃなきゃこの話はナシ、だ」
　大事にされていると言えども、次のドンの報告のためにわざわざ諸外国の有力な組織に、挨拶して周っているようなマフィアの娘なら交渉の一つや二つできるものだとばかり思っていた。テマリと似たような、世界中にホテルをもつ富豪の娘であるヒナタですら、多少のやり取りはできるからだ。
　しかし、テマリの顔の雲行きは怪しい。
「それは、案内だけで本当に済むのか？」
「もちろんだ」
　素人臭さが抜けない。率直な感想だ。
　内容の確認は大事だが、それ以上にやらなければならないことが、この社会にはあることを知らないように思えた。しかし、テマリはうーんと唸ると、やっとマフィアの娘らしくさらに条件を上乗せする。
「この私の案内をさせてやるんだ。たまにはその猫に会わせてくれるか？」
「それぐらいなら」
　容易い条件だった。