「オレは二度手間が嫌いだ」
バキはオレの目から視線を一切動かさずにそう告げると、くるりと体を反転させた。そして、部屋のドアを開けると出て行けとはっきりと行動に表す。
けれど、オレの体はすんなりとは動いてくれない。全身に受けていた殺気がまだ、残っている。これまで何度も命を賭けさせられることがあるが、その時に相手にしていたやつらが可愛らしく思えた。
しかし、このまま出ないというわけにもいかない。オレが部屋から出るとバキはそのまま、ホテルから追い出した。
オレが勝っていると思っていた勝負に、最後の最後で、負けた。大人を舐めるんじゃない、ということか。オレは結局、クソガキ止まりだった。
外の空気をゆっくりと吐いて吸って、落ち着きを取り戻しながら家に向かって歩くが、足取りは重い。
明日もこれ、か?
たとえこの街一番の高級和菓子を持参しても、オレは迎え入れられることはないだろう。もしくはナルトを連れて行って事情を説明してもらうのが一番早いか。