ここはナルトパークにある、しんりんちほー。
たくさんの草と木に囲まれている場所。
これは、そこで仲良く暮らしている、人に似たフレンズたちのお話。
もっと、もっと早く。
太ももを高くあげて、テマリは森林の中を跳ねるように走っていた。落ち葉でふかふかとした地面を思いっきり蹴り上げれば、自慢の白い毛で覆われた尻尾が揺れる。
みんなが仲良く生活をすることをルールとしているこの森の中、で走ることなんて滅多にない。けれど、どうしようもない事情というものもある。
「だー! いい加減にしてくれ!」
目の前には、頭から二本の角を生やしたシカのフレンズ。テマリから逃げているために、足で土を散らしている。
「待てって! ちょっと嗅がせてくれるだけでいいから!」
イタチのフレンズであるテマリも足は早い方だ。しかし、目の前のやつにはなかなか追いつくことができない。地面を蹴る一歩一歩が、テマリよりもずっと長い上に、勢いが強い。
「オスが、メスに、匂いを、嗅がせるわけには、いかねーって!」
「私と、お前は、肉食動物と、草食動物、だ! 変じゃない!」
「じゃあ、アンタ、相当、変態なんだな!」
「なッ……!」
変態。
目の前のオスは、肉の匂いがしたら一度は嗅いでみたいという、テマリの本能を否定した。一気に走りを緩めると、胸を大きく弾ませながらテマリは足を止めた。その間にも、シカはどんどん遠くなる。そして、やがて森の中に消えてしまう。
「べつに……変態なんかじゃ」
そんなつもりじゃなかった。少し匂いを嗅がせてくれたら、それで良かった。肉食の動物なら、誰しもがやることだ。
テマリが尻尾を項垂れさせていると、さっきのシカがめんどうくさそうに戻ってくる。
「落ち着いたか?」
「あぁ……」
「あのなぁ、肉を食ってたアンタらに、匂いを嗅がれるのは草を食うオレたちからしたらこえーわけ。わかるか?」
「わかってるが……」
浮かせた尻尾の先を、もじもじといじりながらテマリが答える。このオスはどうしたって嗅がせてくれそうにない。
シカマルの聞いたことのないはっきりと答えないテマリに、シカマルは盛大に諦めのため息をつく。
「いろいろ言いたいことあっけど……ったって『みんな仲良く』だしなァ……なぁ、オレはニホンシカのシカマル。アンタは?」
シカマルが差し出し手に、テマリは目を見開いた。このオスが、シカマルが、種族と名前を名乗ったことが信じられないからだ。
友達になろう、そういう意味である。だから
「……テマリ、ニホンイタチのテマリ」
シカマルが差し伸べた手に、テマリは手のひらを重ねた。
友達が増えるのは良いことだ、と思われていただったからだ。