「シカダイ、いくぞ。いっち、にー、いっち、にー」
シカマルが声をかけてやると、手を繋いだ先にいるシカダイは、シカマルの声に合わせて一生懸命、土の地面を小さな足で押す。
シカダイが、しっかりと自分の足で一人歩きができるようになったのは、最近のことだ。
大人になってしまったシカマルですら、ときどき「めんどくせー」と漏らしたくなることもある『歩く』という行為もまだ、シカダイには新鮮に感じられるようで自分の足裏から知る、地面のぬかるみや、落ちている真っ赤な葉を、真新しいベビーシューズで熱心に踏みつけていく。
かつて、シカクが自分にそうしたであるように、シカマルも頼りない足を必死に動かすシカダイの手を引いて歩いていく。シカダイの歩幅は、シカマルのそれよりもうんと狭いから、できる限り歩幅を合わせて。ゆっくり進んでいくため、シカマルが予想していた進行にズレが出てきていた。
テマリには「昼前まで」って言って出てきたけど、間に合うか?
シカマルは、キャーと高い声をあげて靴を泥で汚すシカダイを見ながら、背負っていたバックパックの紐を直すと、昨晩の出来事を思い出していた。