今は髭を蓄えているシカマルが、まだよちよる歩きをしていたころ。父であるシカクが息子の手をひいて、一度だけ連れて行った場所がある。
奈良一族の森の最奥にある、手付かずの原生林が残っている区画。枝が連なっている大木には苔が生えており、息を吸えば濃緑が放つ清廉とした空気が胸の中にはいってくる。遠くまで見渡しても大木しかなく、人間どころか、鹿も、虫も、全ての生きとし生けるものの全てをはね除けるような雰囲気がその場には漂っていた。
こわい。
小さなシカマルは、自分がその場所に受け入れられてないことを本能的に悟ると、背筋がぞっと寒くなり思わず、繋がっている父の手をぎゅうと握った。そして、シカクの足の後ろに身を隠れてしまうとそれ以上、原生林を見ないようにした。
何かが、何かがこの場所にいる。しかし、それが何かはわからない。目に見えない、何か。
シカクのズボンを掴み、シカマルが身を震わせていると、その頭上に、シカクの節くれだった大きな手が置かれる。それから、シカクは遠くを見ながら
「ここはな、神様たちが住むトコなんだ」
そう言った。
前に投稿したものと多少の違いが生じたので、非公開にさせていただきました。
リアクションくださったありがとうございます:)