たった今失恋と認めた相手と、その彼女(?)さん。
私はなぜこの二人と、好きではない団子を頬張ることになったのでしょう。それに、私が入った時は中に入れてもらえなかったのに、二人が来てから暖かい店内でお茶をすすれるようになった店の回し方も気になります。
私がこの、手垢が気になるメニュー表を見て必死に何を頼むかを考えているにもかかわらず、
「じゃあ、私は栗餡のせ団子で」
「オレは栗ぜんざい」
一切メニュー表を見ずに二人は注文をします。それほど二人で来ているようです。私はそれに気づきませんでした。
この居心地の悪い空間から逃げ出すためにも急いでさっきと同じものを頼むとお茶をすすっていたテマリさんが
「私は砂のテマリ。砂隠れの里から来た風使いだ。シホ、お前は?」
私に話しかけます。
お二人の空間に邪魔しているのは私のはずなのですが、テマリさんはシカマルさんとの会話ではなく、私との会話を望んだ。その理由がぶっちゃけ、よくわかりませんが、答えないのも失礼なので
「……木ノ葉隠れ所属のシホです、えーっとどこの部署に所属かは機密事項なので、言えません」
そう答えるとテマリさんは次々に私に質問をしてきます。
「そうか。じゃあ、シホは何歳なんだ?」
「十七です」
「私の弟と同い年だ。シカマルともだな。二人はアカデミーで会ったのか?」
「いえ、私はアカデミーには通っていなかったので、最近知り合いました」
「そうか、木の葉でもアカデミーに通わない子がいるんだな。ますます私の弟と似ている。……事情はわからないが、大変だったろ?」
「ぶっちゃけ、そうでもないです。同年代の子とは話が合わなかったので。逆に知り合いの増えた今の方が大変というか」
「だ、そうだ。シカマル、ちゃんとサポートしてやれよ」
それまで黙って私たちの話を聞いていたシカマルさんは、面倒臭そうに「はいはい」と返事をします。それにテマリさんが
「はいは一回だろう」
と睨みつけると、シカマルさんは「はい」と小さく返事をしました。そのやり取りを見て、私は不意に自分が定義した、尻に敷かれている状態というものを思い出しました。
『奈良一族の家庭では妻が夫よりも優位である』
ぶっちゃけ、それってこういうことでしょう?
雑誌なんて買わなくても、最初からシカマルさんをきちんと観察していたらわかることでした。けれどまだ、確信を得られる証拠がありません。この一シーンだけでは判断するには、サンプルの数が少なすぎます。
「はい、栗餡団子と栗ぜんざい、それに餡団子とお待ち」
品物が届き、机の上に並べられたのですが、シカマルさんは自分の栗ぜんざいに手をつけずにテマリさんの方へと渡します。
「アンタこれ、好きだったろ?冷めねぇうちに食えよ」
「いいよ、お前が頼んだんだから、お前が食ったらいいだろ。たまにはちゃんと食え」
「いいんだよ。アンタが美味そうに食ってんのを見てるのがいいから」
……。尻に敷かれるというより、自分から尻に敷かれにいってる?
シカマルさんは、よくわからない人だとの結論に至りました。