シカマルさんの外での交流関係を調査するため、と自分に言い聞かせて私は二人の後をつけることにしました。
ぶっちゃけ、二人の間柄が気になっただけなんですけどね。私は女性を知りませんから、仕事仲間なのか友達なのかの結論が下せないのが気持ち悪いというのもあります。
二人は近くの公園に入るとベンチに腰掛けて、先ほどシカマルさんが贈った甘栗の紙袋の口を開けました。
「見たことない店のだが、美味しいのか?」
「一個つまんだけど、悪くなかったぜ」
「私の分の甘栗をつまんだのか?お前」
と二人はまた口論を始めそうになったのですが、シカマルさんは自分が剥いていた甘栗を女性の口にいれると、女性は怒っていたにもかかわらず、甘栗が口の中に入った瞬間、嬉しそうに甘栗を噛み始めました。それから、ごくりと喉を揺らすと
「うまい」
そう漏らしました。すると、シカマルさんは次の甘栗を口の中にいれてあげ
「悪くねーだろ?」
また次の甘栗を袋から取り出しました。そうやって、シカマルさんは甘栗を次々と剥いては、女性の口へと運んでいきます。自分は一粒も食べずに。そして、袋の中身が半分ぐらいになったところでその手をやめます。
「もっと」
女性が言うと、シカマルさんは
「食べ過ぎだ。今からメシ食いに行くんだろ?いつもんとこで悪ぃがアンタ、あそこのメシ好きだろ」
そう言ってベンチから立ち上がりました。女性もそれに続きます。それから少し不安そうにして
「今日はちゃんと、けんちん汁だろうか」
そんなことを呟きました。シカマルさんはすぐにそれを拾い上げます。
「さぁな。でも、この前アンタがしこたま怒ってたから、変わってるかもしれねー。つーか、定食の汁物に文句言えるぐらいこっちにきてもらってんだな、テマリ」
うるさい、とシカマルさんが『テマリ』と読んだ女性は、顔を赤らめてシカマルさんの背中をバシバシ叩きます。
「いって!!アンタ、自分の力の強さ知ってっか?!」
「知ってる!!」
二人はそんな風に雑談をしながら、公園を出て行きました。二人の間柄は親密だということがよくわかりましたが、そこに恋はあるのでしょうか?なぜあれだけ叩かれても、怒らないのでしょう?
わからないことが増えるばかりです。
シカマルさんは、テマリさんという女性に心を許しているように捉えられます。また、テマリさんも同じようにシカマルさんに甘やかされることを当たり前としています。恋をしている異性というよりは、仲の良い兄弟のような?私には兄弟はいないので、そうと判断できませんが怒られるようなことをしても、許されていますし。
増えた問題に頭を悩ませながら、私は甘栗甘の割引券のことも忘れて、家に帰ってしまいました。