このような先行研究があるのはありがたいと思い、一心不乱に読み込んでみましたが、出典から信頼度の高いとは言えるものではなかったため、内容にいささか不信感を覚えました。
私が問題として提起したいのは、本当にシカマルさんは尻に敷かれるような人なのか、ということです。私の知る限りではそのような印象は受けませんでしたし、どちらかというとリードしてくださるような方なのではないかと仮定しているのですが、上司の言葉がそれを否定しました。
なのでこれから検証する内容について、前提条件として置かねばならないのは、上司の言葉を辞書の言葉を用いて再定義し直した『奈良一族の家庭では妻が夫よりも優位である』だと考えています。が、最初から思考が難航しています。
雑誌に特徴として挙げられている一つ目の『よく「いい人」と言われる』という項目に関して、上司の言葉を裏付ける証拠を何も持っていないからです。
私がシカマルさんと会うのは暗号部の部屋の中だけで、外で彼がどのような人間関係を形成しているかなど私の知るところではたりませんし、シカマルさんの噂を聞いたとしても「いい人」であると証明するには難があるように感じられたからです。
昼休みに中庭のベンチに腰掛けて昼食を摂っていた時です。本来ならば、この一時間は午後の活動の効率を上げるため体を休めたいところなのですが、衝動で買ってしまった、なんの参考にもならなかった雑誌をさらに読み込むしかないのです。
そもそも「いい人」とは何を指すのでしょうか?
辞書にも載っていない言葉に頭を悩ませていると、目の前のテーブルでカラフルな服装をしたくノ一の話が耳に飛び込んできました。
「今度の任務、シカマルさんと行くんだ〜!!」
「えぇ!!うらやましい!!」
「シカマルさんって、すっごく紳士的なんでしょ?」
どうやら彼女たちはシカマルさんのことを知っているようです。というかぶっちゃけ、シカマルさんのことを紳士的だと表現しているので、好意的に見ていると言っても過言ではないでしょう。
私は忍術が苦手だと言っても忍の端くれなものなので、そっと聞き耳を立てているとシカマルさんに関する話をどんどん、してくれました。
「私、シカマルさんと一緒に任務行ったことないんだけど、先輩がすごくいい人だって言ってた」
「あ、それ私も聞いた!!なんだっけ?くノ一にすごく気遣ってくれるんだっけ?休憩の場所とかタイミングとか」
「別のいのさんは文句言ってたけど、作戦もしっかり立ててくれるし、いい人だよねぇ〜!!」
「いい人」
ぶっちゃけ、初めて聞くシカマルさんの外での任務の様子に少し気がそれましたが、キーワードは獲得できました。
シカマルさんは「いい人」との認識があるようです。ということは、一つ目の特徴を捉えていると言えるのでしょう。