遠くから聞こえるパレードの音が鬱陶しく感じる。
聞きたくなくてぬるくなったコーヒーを一口飲めば、目の前に座っているサクラも同じようにすすっった。このテーマパークの目玉の一つであろう夜のパレードがちょうどやっているからもあってか、出入り口にほど近い飲食店の中にはほとんど人はおらず、余計に、パレードの音や歓声が響く。
暖色の光の元ではわかりにくいがサクラの目の下にはもう何本も筋があって、手元のハンカチには黒いシミが何個もある。
泣かせたいわけじゃなかった。だけど結局、泣かせることになってしまった。
オレが紙コップに入ったコーヒーを飲み干すと、サクラはおもむろに笑い出す。
「サスケくんって本当、しゃーんなろーだわ」
くしゃりとハンカチを握って、さらに笑うからオレは顔をそっぽ向けると
「でも、うれしい。まさか……」
ヤキモチ焼いて、だなんて。
ヤキモチとは違う、とオレは咄嗟に何度もした反論しようとするが、サクラは構わずに続ける。
「ね、サスケくん。今度の休みはさ、二人でまたにここに来ようよ。今日のデート、やり直そう。サスケくんが言ってたみたいに、二人で楽しもう」
今日はアトラクションには乗ったが、それはサイといのがいたときだけで他の時間はサクラと言い合いをしていた。ファンシーなカフェで、イタリアンの店で、そしてここでも。部外者の二人がいなくなった瞬間にオレが帰ろうとすると
「なんでそんなに不機嫌なの?!」
と腕をひいた時から、ずっと。サクラに言わせればオレの不機嫌は「ヤキモチ」らしい。結局、研究の忙しい予定の合間をぬって久しぶりにきた彼女とのデートの待ち合わせの駅に、他のやつが居た時のオレの葛藤は伝わらなかったらしい。
「……次はシーじゃなくてランドの方な」
せめてもの抵抗に、今日の苦い記憶がある場所ではない方の名前を告げるとサクラも、納得したように
「そうだね」
と言って、ぐいとコーヒーを飲み干す。そして机の上に乗っていた、オレの分の紙コップを重ねて潰してしまうと椅子から勢い良く立ち上がる。
「じゃ、サスケくん次のランドデートのために、準備しに行こう!」
「準備?」
聞き返すと
「そう!次は私たちもちゃんと、つけ耳つけるわよ!」
なんて楽しそうに言う。サスケくんは何が似合うかな、と息を弾ませるサクラに
「ついでに、お詫びに何か買ってやるよ。何がいい?」
尋ねると
「じゃあ、ストラップがいいな。お揃いのやつつけて、来よう」
にこっと笑った。