LEDかその正体が何かというのはわかりかねるが、様々な色でピカピカと光る電飾で彩られた山車が暗闇をさいて、目の前を過ぎていく。軽やかな音楽に合わせてゆっくりと次々に通り過ぎる山車の上ではこのテーマパークが出している作品のキャラクターがあっちこっちに手を振っており、隣に座っているいのは、そっちに向かって一生懸命手を降っている。
「きゃー!!サイ、見た?!今、こっちを見て手を振ってくれたわよ!!」
頭につけた紫色のサテンの生地を光らせながら、興奮した様子で教えてくれたから「よかったね」と言えば
「サイも一緒にやりましょうよ!!」
ボクの手を持ち上げて、ボクの意思とは全く別に振らせ始める。今のプリンセスのご機嫌は最高潮、といったところだろうか。
サスケとサクラがいた昼間の機嫌は、彼氏であるボクが見ても、最悪だった。デートの予定はいつも分刻みでたてるようないのだから、全く予想外の事態が起こったことに完全にへそを曲げていた。ここでいのも怒らせたらそれこそデートとして成立しないと思って、いのの機嫌は立て直したけれど、時間はかかった。
「あー!!あの衣装、かわいい!!」
裾が丸いドレスを着た、妖精をモチーフにしたであろう女性たちがタイミングを合わせているのか同時にくるくると回りながら通っていくのを見てそれにもさらに、興奮する。
「よかったね」
ボクの腕を掴んだままのいのに言えば
「あ~もう本当、楽しい!」
顔を綻ばせて、猿のように手を叩く。他の女性がしていたら、嫌悪感を覚えるような仕草すらも愛おしいと思うこの感情は、いのが教えてくれた。数多の男を振り切って、同期にも「感情がわからない」と言われるボクがいい、といのが選んでくれた。個展を開くたびに足繁く連日、画廊に通ってくれるし
「次のデート、ここだったらサイの次の作品のインスピレーションになるんじゃない?」
と都内の植物園や山奥にある名もついているか怪しい動物園にボクを連れて行ってくれる。いのがくれたものに比べるとボクがしてあげられることは些細なことで、いのが頑張ったことを無駄にさせないぐらいだろうか。
いのが離さない腕に力をこめて、ぐいと引き寄せれば、いのがきゃっと声を上げる。
「えっ?!何?!」
「いのが楽しそうでよかったなぁと思って」
すんなりと本心に口に出せば、
「やだ、もう~」
胸の中でいのが唸る。見なくてもわかる。きっと顔は絵の具をぶちまけたみたいに真赤だ。