のぞき見デートー『初デート』(夜)

 ヒナタを、デートに連れて行くと決めたのは良かった。ショッピングモールを回ったのだって、楽しかった。知らなかったけど、ヒナタはキャラクターものが好きらしい。色んなお店の前で足を止めては色んなものに

「かわいい」

とずっと言っていた。見つけるたびに、ぬいぐるみを抱きしめたり、小物を持ち上げたり。慌ただしくぴょこぴょこと動き回っている。それぐらいかわいいのであれば買えばいいのにと思って

「買わないのか?」

と聞いたら

「見てるだけで十分」

と言う。
 サクラちゃんもそうだけど女の子のこういうところはよく、わからない。かわいい、と思うのなら買ってそのまま家に置いておけばいいと思うのだが

「めんどくせーことに、女ってーのは買い物にやたらと時間をかけたがるくせに、買わねーんだよ」

そうシカマルが教えてくれたのを思い出す。それから、物を手に入れる欲求が男よりも広くて薄いんだよ、女は、とグチグチと語っていたのも。
 シカマルの言う女とは、高校の時からずっと付き合っているテマリのことだ。オレに比べたらデートの回数なんですごく多いし、買い物一つをとってももう、慣れっこなのだろう。だから、ぎゅうと大きなぬいぐるみを抱きしめる彼女がこんなにかわいいものだとは教えてくれなかった。

「ふふふ」

キツネのぬいぐるみを抱いて、ふかふかのお腹を撫でているヒナタの指先は、優しく毛に触れる。その光景に、ひょっとしたらと温かい未来のことが頭をよぎるが、お付き合いしたてのオレたちにまだそれは早いのはわかっていた。
 意識をそらすために上着のポケットからスマートフォンを取り出すと、丸いボタンを押して液晶を点灯する。そろそろ夕飯時の時間だ。

「なぁ、晩飯どうするってばよ?」

 ヒナタに聞けば

「うーん。いいかなぁ。さっきカフェに入ったし……。ナルトくんは?」

オレに聞き返す。正直に言うとサイの忠告通り、二時間に一回はカフェでお茶を飲んで、何かを摘んでいたから、小腹すら空いていない。

「疲れてないとこっちが思っていても、言い出すのが大事らしいよ。デート全般でも言えることだけどね」

 ヒナタとのデート先を考えている時に、サイがそう言っていた。いのにしょっちゅう、色んなところに引きずり回されているのを知っているから、できるだけカフェに入るのも時間を測って言い出すようにしていたが、さすがにちょっとやりすぎたかもしれない。

「オレも。もうちょっとブラブラして、腹でも空かすってばよ」

 ぬいぐるみを元の棚に片付けているヒナタに、オレが手を差し出すと、その手を握ってくれる。歩き出したはいいが、これからどうしよう。夕飯を食べるとこりに目処はつけてあるが、ポケットの中に入れてる腕時計、いつ渡したらいいんだってばよ?

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