「こんだけやりゃあ、母ちゃんも満足すんだろ」
シカマルはノートを閉じると、長年使っている筆箱の中へと、出していた筆記具をしまっていく。
「もういいのか?今日はあまり聞かなかったな」
「受験用の数学は一人で考えるもんだからよ」
締まりが悪いチャックを閉めて、ノートの上に置くと厚い問題集と一緒に脇へ寄せて、湯のみに残っている緑茶を飲み干す。
「もう一杯飲むか?」
テマリの茶の勧めにシカマルは
「そうすっかなァ」
湯のみを差し出すと、テマリは何も言わずに、それを拾い上げてキッチンに立つ。慣れた手つきで入れる緑茶の葉はどこぞの良いもので、美味い入れ方はずいぶん昔に教えてもらったらしい。
それって誰なんだろーな?
シカマルがボーッとしているうちに湯のみが戻ってくる。立ち上がる湯気の向こうのテマリをふいに見れば、じっとこちらを見ていた。
「これ飲んだら」
シカマルは湯のみに口をつけると、熱い茶をゆっくりと飲み干していった。