「茶はうまいか?」
「こんな上手い茶、飲んだことねぇぐらいな」
オレがわざとティーカップに残した、あと一口分の茶をバキは睨みつける。さっさと飲んで、出て行けということなのだろうが、はっきりと口にはしない。苦々しい顔をしてオレを見下すだけ。
「テマリに人を通すなと言われている。特に、だるそうな男子高校生は」
「そうか。ま、オレには関係ないな。『たまたま』ここに来ただけだから」
話し合いの場で不利になる先攻をとったのは、バキだ。後に回させてもらったオレは、適当に言い逃れしておけばいい。
「『たまたま』か。だったら、オレの優しさに感謝するんだな」
「ありがとうございます、とでも言えばいいか?」
「お忙しい方に口の聞き方も知らないクソガキの相手をしてもらって、が抜けてるぞ」
状況は芳しくないはずなのに余裕を見せるバキに、オレはティーカップの茶を揺らしながら、これからどうしたものかと考えあぐねいていた。