冗談

「子どもができた」と食堂の席で、シカマルと向き合っているテマリは言った。我愛羅からの書類はこれだ、と火影邸で冷静に報告している時と変わらなかった。シカマルは「そうか」とだけ言うと、味噌汁をすすった。
 シカマルはテマリと会議室に戻りながら、考えていた。
 午後二時から打ち合わせがあり、午後六時には会食が始まる。会食の場所は、ずっしりとした松をうりにしている庭園の真ん中にある離れの一室だ。
 話題を戻したのは、テマリだった。
「子どもについて、何も聞かないのか?」
「アンタに子どもいても、おかしくねーからな」
 シカマルはポケットの中で拳を作る。
「引っかかったな。私のことだ、とは言ってないだろう。我愛羅が、だ。こんど、孤児院をつくると言ってたんだ。広義の意味では、我愛羅の子どもだ」
「もっと別の言い方があるだろ」
 はぁ、とため息をつくと、テマリが続ける。
「お前には、冗談の一つも通じないんだな」
「そういうのに付き合うのは、めんどくせーんだ」
「お前らしいと言えば、お前らしい」
 テマリは、つまらなさそうに言う。
「冗談なんて言ってねーで、なにか言いたいことがあるんだろ?」
「わかったか? 我愛羅がそういったことを始めたから、報告書を置くところがなくなった。それで、私が引っ越すことになったんだ。カンクロウは、我愛羅の近くから離れられない」
「それがどうしたんだ」
「今度、うちに来るとなった時に、お前が困るんじゃないかと思ってな」
 すれ違ったくノ一が、目を大きく開いて、こちらを見る。
「オレたちは、ただの茶飲み友だちだろ。またそれも冗談か?」
「あぁ、お前はいつも険しい顔ばかりだからな。たまには、こういう冗談も必要かと思ってな」
「アンタの意図がよくわからねー。ただ、引っ越すんなら、オレの家にこればいい。そういう話だろ?」
「さすがだな」
 テマリが、しししと笑うのか聞こえた。

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