「あぁ、もう。シカマルに腹がたつ」
そう。私は布団の中で怒っていた。きっかけは、日常の些細なことの積み重ねがふいに爆発しただけ。
「どうして、シャツを裏返しにしたまま洗濯機にいれるんだ」
こうしてほしいと思っていることを口酸っぱく言っても、シカマルはその場に居づらそうにしながら「次からちゃんとする」とだけ返事をするだけで、本当に『次からちゃんと』が果たされることはない。
せっかく「これから寝よう」と気持ちをととのえて布団の中に入ったのに、つまらないことを思い出すことは最近、よくあることだった。
嫌になったなら別れたらいいじゃあないか。
と頭では思っている。しかし、現実はそう簡単に割り切れるものでもないこともをわかっている。
しかし、この怒りというのは不思議なものだ。三十を超えた男が、ぐーと寝息を立てている顔を見ているだけでおさまってくるものなのだから、私が思っているよりも実はそう大したことではないのかもしれない。