【R-15】似合わない

 それは興奮した獣とそっくりだ。吐き出すように激しく胸を揺らして息をする。それは、昼はのんべんだらりと日々を過ごしている男が、夜にしか見せない顔のおまけ。おまけのはずなのだが、この男のそんな姿を見ているときは私もたいてい頭がぼんやりしているから、どうでもいいことを考えてしまう。
 こんな姿を他の人が見たら、なんて言うのだろう。しかし、薄っすらと湿った体を激しく揺すりながら、私の興奮を煽っているこんな姿を見れるのは、この男の下でいいようにされている私しかいない。
「ふはっ」
 不意に笑いが溢れる。そうか、こんな姿は私しか見れないのか。当たり前のことだが、それが何かおかしく感じられた。
 男はぴたりと動きを止めると、私の頭を抱えて獣の息の中に低い声を交える。
「どうした」
「いや、なんでもない」
「なんだそれ。詳しく聞かせろよ」
 男は私の頭を揺らしながら、急かす。私が感じたのは、男が見せる野性的な部分が似合わないことだった。

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