【R-18】5.発情期

春の日差しは、テマリの体を温める。
巣穴近くにある芝生の上で、草に背中をすると背中を撫でられているような気になって心地がいい。テマリが一人でのんびりと過ごしていると、そこに角を生やした一匹のオスが近づいてきた。
「よっ、何してんだ?」
「シカマル」
テマリが上体を起こして迎えようとするとシカマルは「そのままでいい」と、手で合図を送る。そして
「ここ、いいな」
テマリの横にごろりと体を転がした。ふかふかの芝生は、シカマルの体を優しく受け止め、包み込む。
「いいだろ? お気に入りなんだ」
テマリが首だけシカマルの方に傾けた。いつも通り覇気を感じない顔をしている。しかしテマリには今日のシカマルが、やけに輝いていた。
じーっと見つめていると、シカマルが視線をぶつけて言う。
「確かにここはいいが、アンタちょっとここに居すぎじゃないか? 顔が真っ赤になってんぞ」
シカマルは腕を伸ばし、指先でテマリの朱に染まった頬を掠る。触られた箇所にぴりっとしたものが走り、テマリははっきりとした奇妙なものを感じ取った。
もっと触って欲しい。
そろそろ来るかもしれないと心当たりはあったが、そんなことを、シカマル相手に思うはずがない。
「そうか? 少し日に当たりすぎたのかもしれない」
テマリは慌てて起き上がると、シカマルから距離をとった。
今日は一緒にいてはいけない。何か理由をつけて、離れなければ。
下半身を芝生でこすり、シカマルから遠のこうとするが、肌に当たる芝がテマリをさらにその気にさせる。
「……ッ!」
突然、雌の部分を布越しに草に撫でられて、テマリは体を震わせた。
「お、おい、どうした」
心配するシカマルをよそに、テマリはと服の上から敏感になった場所を押さえつけると、これ以上刺激が与えないように腰を浮かせる。
「な、なんでもない、から!」
そして立ち上がってしまうと、ここからさっさと去ろうとした。
去年、番になってくれたオスを、巣穴に篭って待つ他ない。今年も来てくれると言っていたから、そろそろやってくるであろうイタチのオスは今はどこにいるのか。ずっと巣穴にいるわけにもかないから、そのオスを近くまで探しに行ってもいい……。
けれど、シカマルがテマリを自分の腕の中に引き込んで、それを止める。抱きとめられた胸から、草食動物の、いや、求めているオスの匂いが、テマリの鼻孔をくすぐった。
「体調悪ぃんだったらおとなしくしとけって、見ててやるから。水、いるか?」
シカマルの優しさは、本来ならば嬉しいもののはずなのだが、今はテマリの胸を踏みつけた。
オスが欲しい。けれど違う動物であるシカマルに思うのは、おかしいこと。
「シカマル、離してくれ。その……あの、アレが……きた、だけだから」
発情してる。
はっきりと口に出して言うのは、フレンズの中でも恥ずかしいことだった。けれどシカマルは離すどころか、腕に力を込める。
「……そういや、アンタ、オスは?」
「じきにくるんじゃないか? アイツ、ふらふらしてるから……なぁ、シカマル、離してくれ。巣に帰る」
シカマルの胸を押し、荒い息を短く吐いて、シカマルの匂いをできるだけ吸わないようにする。
ここにいたいけれど、いられない。テマリは思考が熱で浮かされる中、シカマルがイタチのオスだったらよかったのに、とぼんやりを考えていた。シカマルがイタチでないから「交尾してくれ」とも頼めない。
しかし、シカマルはテマリの体を優しくさすり
「なんかオレにしてやれること、あるか? つれーだろ。オスを待つのは」
まるでテマリが味わっている苦しみを知っているかのように話す。
「なんで」
「ウチはオスが、メスに許されるまでダメだから」
どうして欲しい?
そう尋ねられて、テマリが答えは一つしかない。
「お前がいいなら……アイツの代わりに、して、ほしい」
テマリはスカートの裾をするすると捲り上げると、白い大腿部が晒される。シカマルの視線はそこに釘付けになり、テマリの目前で喉をごくりと鳴らす。
「私はいつでもいい。お前は?」
「オレは……」
シカマルはテマリを芝生の上に寝かせると、ズボンの割れ目から大きくなった雄の象徴を取り出した。
欲しがったものがある、それに自分のして欲しいことがして貰える。期待で、テマリの胸が破裂しそうなほど、膨れ上がった。
「たぶん、できる」
「たのむ」
シカマルの手がテマリのスカートの中を弄り、ぬかるんだ部分に張り付いた布をズラす。熱くなった雌は、まだ涼しさが残る外気に晒されて、テマリに声にならない悲鳴が飛び出させる。
「マジでいれるぞ」
シカマルは最後にそう確認すると、テマリが首を小さく縦に振ったのを見て、雄を雌の中にいれていく。
圧迫感に突き上げられると、その先にある臓器がヒクつく。テマリはシカマルの首に抱きつくと
「シカマル、欲しかった、これ、欲しかった」
自ら腰を振り、シカマルから雄の体液を搾り出そうとした。雌の体の内にある熱い感覚は、雄に与えられる熱でしか冷ませることはできない。それが好意をもつ雄なら、なおのこと。
それに答えるように、シカマルはテマリの腰を捉えるとズボンが汚れるのも気にせずに、律動を始める。
「早く、早くちょうだい」
隠しきれない雌がテマリの表面に現れると、無様な姿を見せたくない理性を押さえつけて、シカマルを強請る。
「わかっ、たッ。わかった、から、待てってッ……!」
容赦無く最奥を叩きつけられると、雌は高い声を上げて喜ぶ。そしてすぐにばら撒かれるであろう雄の体液を逃すまいと根元を掴み、少しでも多くを取り込もうと奥が広がった。
「テマリ……ッ!」
シカマルはテマリの首元に顔を埋めて、噛み付く。その瞬間、テマリの視界の中で火花が散った。
下腹部の中で、臓器が動き、痛む。去年もそうだった。首を噛まれると腹が、痛くなった。
それからシカマルの雄が一層大きくなり、欲しかった液体が放出されると、徐々に痛みは治まっていく。
「シカマル……」
汗が滲むシカマルの首を、テマリはひと舐めした。そして耳の近くで「ありがとう」と呟くと、熱気のこもるシカマルの背にさすり上げた。

その後、テマリの腹は膨らんだ。
シカマルとの交尾まがいの戯れをしたその晩にきた、番としているオスとも同じことをしたから、それが原因じゃないかと思っていたが、出てくるはずの期間を過ぎても、腹の子はなかなか産まれなかった。
その子どもが産まれたのは、熱射が照らす夏をすっかり飛び越え、秋晴れが広がるある日のことだった。カンクロウに手伝ってもらいテマリが腹から出したものは、シカマルにそっくりな、男の子であった。

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