3.食べ物

日の当たる岩場の上は、シカマルのお気に入りの場所であった。
ぽかぽかとした陽気で暖められたその場所で、身を丸めて眠る。敵のいないここでは、贅沢でもなんでもないことだったが、ダラダラしていても誰にも怒られないことが重要だった。高い岩場までは、なかなか誰も登ってこない。
太陽でじっくり体を焼きながら、シカマルは拾ったばかりのナルトまんと書かれたパッケージを開けた。テマリがシカマルの匂いを嗅ぐだけ、と言ったのはこの食料のおかげだ。食べるものをとる必要がないから、肉を食べる動物は狩りをしない。このナルトまんがどこからきているか知らないが、そこらへんに落ちているものだ。
シカマルが緑色のまんじゅうに噛み付いて、ふかふかの触感を楽しんでいると
「シカマルー!」
誰かが岩場の下から自分を呼んだ。無視しようともしたが、その声の主は下手したらここまで登ってきかねない。
「今行く」
パッケージの中に齧りかけのまんじゅうを戻して、立ち上がると岩場を下っていった。

「なんだ、それ?」
「何って、ナルトまんだろ」
自分を呼びに来たテマリは、シカマルに何の用もなかった。持て余した暇をどうにかするためにここに来たらしい。そしてシカマルが食べていたナルトまんに興味を示したのだ。
「私の食べてるやつと色が違う」
「そうなのか? 緑ばっかだと思ってた」
シカマルの友達である、イノシシのいのやインコのチョウジは緑色のまんじゅうを食べている。だから、そればかりなのかと思っていたがどうやら、違うらしい。
「……一口くれないか?」
「別にいいけどよ」
シカマルは持っていたパッケージをテマリに手渡すと、テマリはウキウキした顔でまんじゅうを取り出した。そしてぱくっと可愛らしく食むと、もごもごと口を動かし、飲む。耳が微かに揺れる。
「うーん。なんか、変だなこれ」
「そうか?」
「なんというか、私が食べているものと違う味がする」
「オレとお前じゃ種類が違うんだから、食べるものもちょっと違うんだろ」
ナルトまんの正体は不明だ。
けれど今日一つわかったことは、食べる動物によってナルトまんが変わるらしい、ということだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です