※アニボル58話ネタバレ注意
「送ってあげなさい」
風影様の命令はたまに残酷で、私にそんなことを言う。そもそもこの風影邸から駅まで送っていくような距離もないのに、甥に優しすぎる。
「命令じゃなきゃ、やらないんだから」
「わかってるっつーの」
小憎たらしいこの男の、どこに可愛げを感じるのか理解できない。肉親なんてそんなものなのかもしれない。
シカダイが雷車に乗り込むのを見届けて、私が帰ろうとすると
「ヨド」
私を、あの男が呼ぶ。
「なによ、用がないなら呼ばないで」
微かにうごく唇は、音なんて出なくて、でも、動きからわかって。
「うるさい」
「オレ、何も言ってねぇだろ」
「それぐらい、わかるに決まってるじゃない」
フードを深くかぶれば、はっとシカダイが笑う。
「好きだ」
なんて、バカじゃないの?言わなきゃバレないとでも思った?女の子を、甘く見ないでよ。
(お題:確かに恋だった様 http://have-a.chew.jp/)