ゴム毬と影
砂からぽてりと落としたゴム毬の行方を、オレは見なかった。理解をしてくれる人がいなくなったことがこんなにも苦しいだなんて思わなかった。オレにまとわりつくものは全てを奪っていった。 しかし過去を精算して振り返ってみれば、そ…
砂からぽてりと落としたゴム毬の行方を、オレは見なかった。理解をしてくれる人がいなくなったことがこんなにも苦しいだなんて思わなかった。オレにまとわりつくものは全てを奪っていった。 しかし過去を精算して振り返ってみれば、そ…
※アニボル58話ネタバレ注意 「結婚しよう」 高い心拍数に、荒い呼吸。 嘘がひとつも混じっていない、きれいな言葉をシカダイはくれた。 「はい」 でも私は汚くて、鼻声で返事をしてしまった。シカダイにちゃんと伝えられた…
※アニボル58話ネタバレ注意 木の葉と砂、中忍試験。 たった二つのキーワードしか繋がりがないのに「テマリ様たちがそうなったから」と、なぜか私たちもそれになぞらえられていて。ただ一緒にいるだけなのに 「将来、あの二人も…
※アニボル58話ネタバレ注意 「バカ」 私の口は言いたいこととは、全く別のこと言う。でも勝手に動くのだから、仕方ないでしょ。 「バカ、バカ」 何回言っても、シカダイは何も言い返してこない。私が悪いってわかってるけど、…
※アニボル58話ネタバレ注意 「送ってあげなさい」 風影様の命令はたまに残酷で、私にそんなことを言う。そもそもこの風影邸から駅まで送っていくような距離もないのに、甥に優しすぎる。 「命令じゃなきゃ、やらないんだから」 …
※アニボル58話ネタバレ注意 街の中は好きじゃない。音が波のように押し寄せて、私を襲ってくる。いだから、いつもは音楽を聞いて躱しているけれど、プレイヤーの替えの電池を買いに行く途中にかぎって、電池は切れる。 なんてツ…
「しっかりしな!」そう言われて頬をひっぱたかれた時に、オレは身が引き締まる思いがした。うじうじと悩んでいても仕方がない、お前はどうしたいんだと言葉以上に詰まった平手は何よりも効いた。けれど、息子はそうは思わないらしい。頬…
「テマリ、オレの手袋どこいった?」私が、シンクの中に積み上げた食器を洗っていると、可愛くない髭面の男の顔がひょっこりと顔をのぞかせる。「昨日、靴箱の上に置いてたじゃないか」「えっ、そうだっけか?」慌てて出ていく広い背中。…
ぬるくなった麦茶を喉に流し込むと、やっと生き返った心地がした。からからになった体にじんわりと染み込む麦茶は、また汗になって出ていくのだろう。 じゃわじゃわと鳴く蝉の声を聞きながら、口を開けてぼぅとしていると、机に残った水…
ゆっくりと目を開けると、ぼんやりとした朝日が昇っているようで、部屋の中に明かりを差し込んでいた。 私は、体にまとわりつく二本の腕から抜け出すと、昨夜のうちにまとめておいた自分の荷物へと手を伸ばした。 肌をさらけ出し…