シカマルと別れることになった。恋人同士になって、一年目と言う日に。
里が違う。
たったそれだけのことが原因だった。それに、シカマルが「耐えられない」と言い出した。
「結婚しよう、つってるのに、アンタ、なかなかこっちに来てくれねーし」
付き合った時からずっと言われていたことだった。そのことに、私が首を縦に振らなかったのが悪い、らしい。
私には、砂に弟たちを置いて行くなんてことは、できない。
私も、何度もそうやって口にしてきた。だから、お互い落としどころを探して話し合い、結局、別れの道を選んだ。その話の最後に私が
「お前なんて嫌いだ」
と眉間に皺を寄せるとシカマルは
「オレは好きだけどな」
腫れた眉を下げて笑った。
私たちが別れたといっても、仲間であることには変わりがない。私たちはまるで何もなかったかのように振る舞った。あいかわらず会議の席は隣だし、一緒に食事をとる。少なくとも、終わったようには見えなかった。仕事があるからそうなったのかもしれない。
「で、あの件が……」
「その件だと……」
会議終わりの定食屋で、盆に乗せられた皿たちを突きながら話をしていると、私は何も言っていないのに、シカマルは醤油を取ろうとした。付き合っていた時は、取りにくい調味料をシカマルがとってくれていた。けれど、付き合っていない今では?
シカマルは一度、伸ばした手を引っ込めて
「醤油、いるか?」
なんて聞いてくる。いらない訳がない。
「いる」
と私が答えると、ようやくシカマルの手が醤油瓶を掴んだ。
シカマルの内側で燻っている好意は、姿を見せたり、隠したりする。ややこしいやつは、自分がいることを間違いだと気づいている。気づいてはいるが、居場所が見つからない。私も与えてやれない。
しかし、それが消炎してしまったとわかったのはすぐだ。
会談に行く我愛羅の護衛任務に、カンクロウとついていた時のことだ。中継地の木の葉で休んでいると、シカマルが顔を見に来てくれた。
そして、最初に我愛羅とナルトの話をすると、次にカンクロウと今日の任務の話を、それから最後に私に簡単な挨拶だけ…。
そこではっきりとわかってしまった。私たちはもう共に歩くことはないのだ。終わってしまった恋は、二度と燃えることはない。心に、冷たい風が吹く。
燻っていたのは、どちらなんだ?