【R-18】5.はつじょうき
オヤジに勝負を挑み、負けたことは良い薬だったのかもしれない。秋以外はだらしのないオヤジだが、雄としての力量さを見せつけられて、吹っ切れたところもあった。ギラギラになった、他の若い雄たちとの生傷の絶えない日々を過ごすうちに…
オヤジに勝負を挑み、負けたことは良い薬だったのかもしれない。秋以外はだらしのないオヤジだが、雄としての力量さを見せつけられて、吹っ切れたところもあった。ギラギラになった、他の若い雄たちとの生傷の絶えない日々を過ごすうちに…
テマリが美味そうにザリガニを喰らった帰り道。「暇だ」テマリがオレの背中で体を伸ばしながら、しなやかな毛でオレの体を撫でる。子どもたちが乗っていたその場所に、今度は母親が乗っているなんて少し変な気がした。「暇って……冬支度…
イタチの子どもは、シカの子どものようにずっと傍にいるわけではないらしい。ある日、忽然とテマリの子どもたちは全員、姿を消した。「みんな、親離れしたんだ」一匹になったテマリは、切り株の上でぴんと背筋をたてながらそう教えてくれ…
森の中にある、苔むした切り株がテマリの住処だった。中がどうなっているかなんてシカのオレにはわからないが、テマリの子どもたちは「住みやすい」と言っていた。ほくほくした地面と、薄暗い隙間はイタチの好むところらしい。巣を持たな…
春を迎えた森は、騒がしくなる。花が開いた木々たちは緑の森に彩りを与え、その木の上で親鳥がピーチクパーチクとくだらないお説教を小鳥にしている。花は木の実になるからいい。しかし親鳥の講釈は長いだけで、無駄だらけだ。オレが「う…